2025.01.14 お知らせ 【T-Startupインタビュー】日本と世界をつなぐ挑戦者。富山から拡がるボードゲームの可能性 ー株式会社Engames 富山県が主催するスタートアップ支援プログラム「T-Startup」。その選定企業の一つであり、ボードゲーム業界のベンチャー企業として注目を集める株式会社Engames。富山を拠点にカフェ事業からスタートし、事業を多角化してきました。今回は代表取締役社長の杉木貴文さんに、起業ストーリーやボードゲーム市場への想い、未来への展望を伺いました。 撮影:株式会社Sugar love 杉木貴文 氏(すぎき・たかふみ)株式会社Engames代表取締役社長富山県富山市水橋生まれ、浄土真宗本願寺派僧侶。富山高校普通科、慶應義塾大学経済学部、東京工業大学社会理工学研究科を経て株式会社インテックに入社。以後、営業、事業企画、研究開発部門に従事。2017年に退社し、Engamesを創業。中学生の頃に世界初のトレーディングカードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング』に出会い、以後没頭。大学院時代にはプロツアーに出場するため海外を転戦。新規TCGの開発支援やイベント運営を行うなど、アナログゲームに制作側としても携わる。2023年度よりT-Startup企業として2年連続で選定。成長するボードゲーム市場に見出したビジネスチャンス―本日はよろしくお願いいたします。はじめに、杉木さんが起業に至るまでの経緯を教えてください。杉木氏 大学院卒業後にシステム開発会社で10年間働き、営業や事業企画、研究開発を経験しました。将来的に実家のお寺を継ぐ必要がある中で、会社勤めとの整合性が難しいと感じ、独立して自分の力で事業を興してみようと決心しました。ー起業するテーマとしてボードゲームを選んだのはなぜですか?杉木氏 自分の強みを生かして起業したい、好きなものを仕事にしたいという気持ちがありました。当時、ボードゲーム業界がちょうど成長期に差し掛かっていたこともあり、事業として挑戦していく可能性を感じました。東京や大阪でボードゲームカフェが続々とオープンしている中、富山や北陸にはまだ専門店がなかったことも大きなポイントでした。2017年、富山初のボードゲームカフェ兼北陸初の専門店を立ち上げました。 小さなカフェから始まった世界への挑戦―創業時はカフェと小売業が中心だったそうですが、どのように事業領域を広げてきましたか?杉木氏 実践しながら少しずつ事業領域を広げてきました。起業当初は「ずっとカフェと小売だけで運営していこう」と思っていました。しかし実際にビジネスを始めると、運営する中で市場のニーズやビジネスチャンスに気づきました。小売を通じて他社が流通や出版をどのように戦略的に行っているのかが見え、そこから卸売業や日本語版の出版事業にも挑戦するようになりました。現在では、海外からボードゲームを輸入するだけでなく、日本のゲームを海外市場に届ける“メガディストリビューター事業”という新たな取り組みにも挑戦しています。一つずつ確実に進めてきた結果、ここまで事業を拡大できました。 ボードゲーム市場で果たすEngamesの役割―現在のボードゲーム市場の規模や課題、Engamesのサービスの特徴について教えてください。杉木氏 世界のボードゲーム市場は現在約1.5兆円で、2030年には3兆円規模に成長すると言われています。一方、日本国内の市場規模は約100億円程度と小さいのが現状です。日本の市場をどう活性化させ、世界市場とどう繋げていくかという部分は、今後も挑戦していけると感じています。そんな中で、私たちの強みは“目利き”にあります。輸入するボードゲームを選ぶ際には海外の展示会に足を運び、出版社と直接交渉して日本市場に合うゲームを厳選しています。実際に、輸入したゲームが日本のボードゲーム大賞で4年間のうちに2度大賞を受賞することができました。私たちならではの目利き力や行動力を評価いただいた結果だと思っています。―海外から見た日本のボードゲームの評価と可能性はいかがでしょうか?杉木氏 10年以上前から、日本のボードゲームデザイナーは国際的に高く評価を受けています。ただ、これまでは日本のデザイナーのアイデアが海外で商品化され、日本にはライセンス料だけが入る形が主流でした。これを変えるために、日本の出版社が直接日本人デザイナーのゲームをプロダクト化し、それを海外市場に輸出する仕組みを構築したいと考えています。質の良いゲームを開発するデザイナーや、それを商品として磨き上げる編集者、デベロッパーの育成は、まだまだ課題があると感じています。そうした人材の成長を支える環境作りに、私自身も貢献したいと思っています。 T-Startup支援と次のステージへ―T-Startupでの支援はどのように活用されていますか?杉木氏 コロナ禍でボードゲーム市場が一時的に拡大した後、成長が鈍化している中で、新たな伸び代を見つけるためにT-Startupの支援を受けました。T-Startupのハンズオン支援を通して、メガディストリビューター事業への挑戦が形になり始めています。確実に次のステージに進める準備が整っています。ー連携したい業界や今後の事業展開について教えてください。杉木氏 物流業界やクリエイターエコノミーと連携していきたいです。特に、デジタルゲームや出版業界で活躍しているグラフィックデザイナーやイラストレーターがボードゲーム業界に参入することで、新しい可能性が広がると思っています。また、メガディストリビューター事業の分野にはまだ競合が少ないので、先駆者としてしっかり基盤を作っていきたいです。これからもボードゲーム業界や地域にポジティブな影響を与える企業であり続けたいと思います。 “好きなもの”を武器に、着実に事業を広げる杉木さんの挑戦は、多くの起業家や読者に勇気を与えてくれるストーリーです。ボードゲームを通じて生み出される新たな価値の広がりに、今後も注目していきたいと思います。「T-Startup Leaders Program 2024」についてT-Startup企業とは、高い成長が見込まれ、富山県内外のイノベーションを牽引する可能性を秘める県内企業です。本プログラムでは事務局を中心とした伴走メンターにより、選定企業の成長目標や課題などを元にプログラム期間内での最適な支援内容が策定され、6ヶ月の期間で急成長に向けた伴走型のハンズオン支援が提供されます。【T-Startupリンク】https://t-startup.jp/ 【T-Startupインタビュー】資産運用をもっと身近に。初心者も安... 令和6年度 とやまヘルスケアベンチャーミートアップin東京(1/21...