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【T-Startupインタビュー】資産運用をもっと身近に。初心者も安心して踏み出せる環境づくりー株式会社Fan

富山県が主催するスタートアップ支援プログラム「T-Startup」に3年連続で選定されている株式会社Fan。同社はネット証券を活用した資産運用の相談窓口を展開し、投資初心者から経験者まで幅広い顧客層に対応しています。代表取締役の尾口紘一さんに、起業の経緯やサービスの価値、今後の展望について伺いました。

尾口紘一 氏(おぐち・ひろかず)
株式会社Fan代表取締役
1982年生まれ。富山県出身。神奈川大学卒業後、日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に新卒FAとして入社、資産コンサルティング業務に従事。2008年に富山県でFanを設立。現在は資産運用を気軽に相談できる『投資信託相談プラザ』を全国に展開。自身も講師を務める資産運用セミナーは開催数1000回を超え、延べ6万人以上が参加。所属金融商品取引業者等はSBI証券、楽天証券、ウェルスナビ、ソニー銀行。資産運用に加え、保険、不動産、住宅ローンなど、ワンストップで対応するコンサルティングサービスを展開している。2022年度より3年連続T-Startup企業に選定。

ネット証券と対面サポートの可能性に挑む

―本日はよろしくお願いいたします。まず、創業の経緯について教えてください。

尾口氏 私は学生時代にWeb制作事業で起業を志した経験がありますが、その際に経営をする上で社会人としての経験が必要だと痛感しました。新卒で証券会社に入社し、富裕層を中心に資産運用の提案業務に携わりました。

当時はネット証券が台頭し始めた時期で、一部の投資リテラシーが高いお客様が手数料の安いネット証券を選び始めていました。例えば、100万円の株を購入する際、対面証券では1万円の手数料がかかるのに対し、ネット証券ではわずか100円程度。このように圧倒的なコスト差がありましたが、ネット証券やネット銀行の信用性や安全性に対する不安もまだ根強い状況でした。しかし、この不安が解消されれば一気に普及するだろうという確信を持っていました。

ただネット証券が普及したとしても全ての人がうまく使いこなせるわけではありません。貯蓄から投資への動きを加速させるには、ネット証券だけでは難しいと感じていました。そこで、お客様一人ひとりの状況に応じた対面のサポートサービスの提供に可能性を見出し、地元の富山で2008年に創業しました。資産運用は富裕層や一部の個人投資家だけが行うものではなく、すべての人が豊かな未来のために取り組むべき大切な手段だと思っています。ネット証券と対面サポートを融合させるこのモデルを通して、投資の敷居を下げ、多くの人に「貯蓄から投資へ」の一歩を踏み出してもらいたいです。

相談料は無料、資産運用の敷居を下げる

―Fanのビジネスモデルについて教えてください。

尾口氏 私たちはIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)という中立的な立場からSBI証券や楽天証券と提携し、ネット証券を利用するお客様に資産運用の相談窓口を提供しています。資産運用を主体に、NISAやiDeCoを活用した堅実な資産形成のアドバイスを行っています。

お客様の取引に応じた手数料の一部を証券会社からいただく形で成り立っているため、相談自体は無料です。特に大切にしているのは、ギャンブルのような投資ではなく、お客様の夢や目標に基づいた「いつまでに、いくら作りたい」という具体的なゴール設定に寄り添うことです。初心者の方でも気軽に相談できる環境を整えています。

―貯蓄から投資への動きについて、現状の市場環境を教えてください。

尾口氏 近年、ネット証券の口座開設数は増加していますが、口座を開設したものの取引をしていない方が約4割いると言われています。また、1人あたりの運用金額も200万~300万円程度で、老後に向けた本格的な資産運用ができているとは言えない状況です。

貯蓄から投資への流れを本当に加速させるには、初心者が安心して始められる環境が必要です。Fanではその架け橋となる役割を果たし、「資産運用をあたりまえに」というビジョンを実現していきたいと考えています。

資産運用の相談窓口をもっと身近に

―今後の展望や注力する分野について教えてください。

尾口氏 ショッピングモールなど、生活圏内で立ち寄れる資産運用の相談窓口を増やしていきたいです。これまでの資産運用の相談窓口といえば都市部の一等地に構えられていることが多く、敷居が高いと感じる方も多かったのではないでしょうか。その点、ショッピングモール内の店舗は、普段のお買い物のついでに気軽に立ち寄れるという利点があります。

また、ネット証券が広がる中で、チャットサポートやコールセンターの応答に課題が見られることもあります。個人、法人、資産形成層、富裕層などそれぞれのお客様の状況に合わせて、よりきめ細かいサポートを提供する役割を担っていきたいと考えています。

―連携していきたい分野はありますか?

尾口氏 現在、佐賀銀行さんと実施している連携モデルを他の地方銀行さんとも進めていきたいです。地域金融機関にとって、ネット証券との連携は一見すると競合関係のように思われがちです。特に、新NISAの導入に際して「顧客がSBI証券や楽天証券に流れてしまうのではないか」と懸念されていた銀行さんも多かったです。しかし、ネット証券を脅威として捉えるのではなく、銀行の既存事業とネット証券の強みを両立させることで、顧客ニーズに幅広く応えることができます。私たちは、どちらか一方を選ぶのではなく、両方を活かした事業の形を提案しています。そうすることで銀行の強みを発揮しつつ、ネット証券を補完的に活用する形で新しい付加価値を生み出すことができています。「貯蓄から投資へ」の流れを促進する上で、地域金融機関との連携は大きなインパクトを生むと思っています。

「成長を目指す会社」としての旗を掲げる

―T-Startupに3年連続選出ということで、プログラムへの感想や今後の期待を教えてください。

尾口氏 T-Startupに選ばれたことで、「成長を目指す会社」としての旗を掲げることができているのではないかなと感じています。この旗を掲げたことで、成長志向のある人材に「富山から上場を目指している企業がある」と注目していただける機会が増えるといいなと思っています。どんなビジネスであっても、企業の成長を支えるのは“人”です。私たちもここまで少しずつ成長できたのは社員のおかげです。選定企業が良い人材との出会いを得られる機会としても、T-Startupの価値をさらに高めていくことができればと期待しています。

 

投資をもっと身近に、そして安心して取り組める環境を提供することを目指す尾口さんの挑戦。日本全体で「貯蓄から投資へ」という流れを後押しするFanの今後の展開に注目です。

「T-Startup Leaders Program 2024」について
T-Startup企業とは、高い成長が見込まれ、富山県内外のイノベーションを牽引する可能性を秘める県内企業です。本プログラムでは事務局を中心とした伴走メンターにより、選定企業の成長目標や課題などを元にプログラム期間内での最適な支援内容が策定され、6ヶ月の期間で急成長に向けた伴走型のハンズオン支援が提供されます。

【T-Startupリンク】
https://t-startup.jp/